コミュニケーションは難しい (2001.7.21熊本日日新聞夕刊 第四回)
コミュニケーションは難しい。
特に文字で気持ちを伝える事は至難の業に思えてくる。
最近eメールを良く使うが、単なる情報の伝達に留まりかねない時がある。
手紙では時間をかけて言葉を選び、相手の気持ちを汲み取り、自分の思いを
伝える努力をしてきた事をはっと思い出した。
毎日の膨大なメッセージの洪水に押し流されて本来の目的を忘れかけていたのだ。
会話の難しさの一因はターミノロジーギャップにある。
これは相手と自分が持っている言葉を解釈する辞書が違うため、言葉は伝わるけれど、
思いやイメージが伝わり難い事を意味している。
親子や老若の世代間ギャップは共通の話題が無い事に起因している事にも似ている。
私も自分の思いをうまく表現できなくて苦労しているが、相手の言葉の背景にある思いを
汲み取る事は更に難しいと痛感している。
言った事と思っている事は同一ではないのだ。
実はコンピューターの世界でも同じなのである。
コンピューターは命令したとおりに動くが、思ったとおりには動いてくれない。
プログラムは命令を記述した手紙と同じだからである。
IT革命であたかもコンピューターが主役になるかのような誤解があるが、
そんな事は当分の間、絶対に無い。
私は今のパソコンはローテク製品と思っている。
こんなに新製品が次々と出てくるのは、技術革新の余地があるからで、
即ちまだまだ成熟した技術ではないのであると考えている。
パソコン誕生からまだ20年。
やっと道具としてまともになってきた。
これからますます進化するであろうが、当分のあいだは思った通りには動いてくれない
道具なのである。
だからこそ、私は自分の思いや価値観をしっかり記述し、コミュニケーションの達人に
なりたいと願っている。